LANポートのない古いPLCからデータを取る4つの方法

「設備のデータを取りたいが、PLCにLANポートがない」——古い設備の見える化を考え始めると、ほぼ確実にぶつかる壁です。先に言っておくと、古いPLC(設備の制御装置)にLANポートがないのはごく普通のことで、あなたの設備が特別ハズレなわけではありません。

それでもデータを取れる可能性のある経路は4つあります。シリアルポート経由・通信ユニットの増設・入出力信号を外側で拾う・表示器(タッチパネル)経由です。そして、どの経路を選ぶにしても最初にやるべきは配線ではなく「機種の仕様確認」です。この記事で順番に整理します。

この記事でわかること
  • LANポートのないPLCからデータを取る4つの経路と費用の目安
  • 着手前に必ずやる「機種の仕様確認」の進め方
  • PLC側に手を入れる場合の安全上の注意とリスク
  • PLCに触らず外付けセンサーで済ませる判断基準
目次

古いPLCにLANポートがないのは「普通」です

PLCにイーサネット(LAN)機能が標準的に載るようになったのは、比較的最近のことです。1990年代〜2000年代に導入された設備のPLCは、通信といえばシリアルポート(RS-232CやRS-422/485という昔ながらの通信規格)が中心で、そもそも外部と通信する前提で組まれていないものも珍しくありません。

さらに現場では、次のような事情が重なりがちです。

  • 設備メーカーが廃業・サポート終了で、仕様を聞ける相手がいない
  • 図面やラダープログラム(PLCの中身の制御プログラム)が残っていない
  • 現役で生産を支えている設備なので、怖くて触れない

この状況でも打つ手はあります。ただし「どのPLCでも使える万能の方法」はありません。経路は4つ、選べるかどうかは機種次第——これがこの問題の全体像です。

データを取れる可能性のある4つの経路

LANポートがないPLCからデータを取る経路は、大きく次の4つです。

経路仕組み費用の目安ポイント
① シリアルポート経由PLCのシリアルポートに変換器(ゲートウェイ)をつなぎ、LANやクラウドに中継する変換機器で数万円程度〜+設定の手間ポートと通信仕様が公開されている機種なら有力。生産を止めずに済むことが多い
② 通信ユニットの増設PLCの空きスロットにイーサネット通信ユニットを追加するユニットと作業で数万〜数十万円程度増設できる機種・ユニットがまだ入手できる場合に限る
③ 入出力信号を外側で拾うPLCの中身には触れず、信号灯・リレー・電流などを後付けセンサーで検知する部品代数千円程度〜/台機種を選ばず、設備を改造しない。取れるのはON/OFFレベルの情報
④ 表示器(タッチパネル)経由PLCにつながっている表示器の通信・ログ機能を利用してデータを外に出す表示器の機能次第。数万円程度〜表示器が比較的新しい場合に検討価値あり。表示器の型式確認が先

①のシリアル経由は、PLC内部のデータ(生産数のカウンタ値やエラー情報など)を取れる可能性がある点が魅力です。市販のシリアル−LAN変換器やIoTゲートウェイ(現場機器とネットワークの橋渡しをする機器)を使いますが、PLC側の通信プロトコル(通信の約束事)に対応しているかは機種ごとの確認が必須です。

②の通信ユニット増設は正攻法ですが、古い機種では対応ユニットがすでに生産終了していることが多く、中古品頼みになる場合もあります。③は取れる情報こそ限られるものの、機種を一切選ばないのが強みです。④は「表示器だけ後から更新されていた」という設備で、思わぬ近道になることがあります。

PLCからのデータ収集の全体像(メーカー別の考え方や取れるデータの種類)は、別記事で詳しく解説しています。

どの経路も「機種の仕様確認」が先、という現実

4つの経路を紹介しましたが、①②④はいずれも「その機種で使えるか」がすべてです。ネットの成功事例は他機種の話であって、あなたのPLCで同じことができる保証はありません。だからこそ、部品の購入や配線より先に、仕様確認から始めてください。

STEP
銘板の写真を撮り、型式を控える

PLC本体・電源ユニット・表示器それぞれの銘板(型式が書かれたラベル)を写真に撮ります。制御盤を開ける必要がある場合は、設備の停止中に有資格者・保全担当の立ち会いのもとで行ってください。

STEP
メーカー資料で通信仕様と保守状況を調べる

型式が分かれば、メーカーサイトのマニュアルで「通信ポートの種類と用途」「増設ユニットの対応」「生産終了・保守期限」を調べられます。生産終了品でもマニュアルは公開されていることが多いです。

STEP
可否と代替案をセットで判断する

①②④が使えそうなら具体的な機器選定へ。どれも難しそうなら、無理をせず③の外付けセンサーに切り替えます。この判断は設備メーカーやシステム会社に相談しても構いません。

ご相談を受けたとき、私が最初にお願いするのもこの銘板の写真です。理由は単純で、型式さえ分かれば「何ができて何ができないか」の大半が机上で判断でき、現地調査の前に無駄な選択肢を消せるからです。逆に型式が分からないまま機器を買うのは、靴のサイズを測らずに靴を買うようなものです。

私

調べた結果「この機種では無理」と分かることもあります。それでも、外付けセンサーという逃げ道が残っているので、調査が無駄になることはありません。

PLC側に手を入れる場合の安全とリスク

①のシリアル接続や②のユニット増設は、制御盤を開けてPLCに触れる作業です。次の点は必ず守ってください。

  • 作業は必ず設備の電源を遮断してから行う。AC200V系の配線に関わる作業は電気工事士の範囲
  • 設備メーカーの保証・保守契約に影響しないか、事前に確認する
  • 作業前にラダープログラムのバックアップが取れるか確認する(取れないなら触らない判断も)
  • 古いPLCは保守部品が枯渇している。作業ミスで壊すと、修理も交換もできず生産が止まる恐れがある

特に最後の「保守部品の枯渇」は、古い設備ならではのリスクです。現役で生産を支えているPLCは、壊れたときの代わりが手に入らないことがあります。データ収集のために生産を危険にさらすのは本末転倒です。少しでも不安があれば、PLCに触れない③の経路を選んでください。

PLC内部の入出力配線から信号を分岐して取り出す改造は、動作不良や誤動作の原因になり得るため、安易にはおすすめしません。取るなら盤の外側で、が原則です。

無理せず外付けセンサーで済ませる判断基準

ここまで読んで「うちには荷が重い」と感じた方に、私の判断基準をお伝えします。分かれ目は、「PLCの中の数値」が本当に必要かどうかです。

経路の選び方の目安
  • 外付けセンサーで十分:知りたいのが「動いているか」「何回動いたか」「いつ止まったか」「温度」程度の場合
  • PLC経由を検討:生産数のカウンタ値・エラーコード・設定値など、PLC内部にしかない数値がどうしても必要な場合

私の経験では、「稼働の見える化がしたい」という相談の多くは、実は外付けセンサーで足ります。信号灯の点灯を光センサーで見る、電源線をクランプ式電流センサー(配線を切らずに挟んで測るセンサー)で測る、といった方法です。具体的なやり方は設備を改造せずに信号を取り出す4つの方法で詳しく解説しています。

外付けセンサーの受け側にはESP32などの小型マイコンをよく使いますが、基板むき出しの部品なので現場設置はケースとセットで考えてください。ケース一体型のM5Stackシリーズや、タカチのBCAPシリーズ・未来工業のウオルボックスといった防水防塵ボックス(数百〜3,000円程度・2026年8月時点の目安)に収める方法があります。

費用の目安

経路別の費用の目安(1台の場合)
経路費用の目安備考
③ 外付けセンサー部品代数千円程度〜+仕組みづくり自作なら部品代中心。外注で集計画面まで作ると数十万円〜
① シリアル経由変換機器数万円程度〜+設定・開発通信仕様の調査と設定込みで外注すると数十万円〜になることも
④ 表示器経由数万円程度〜表示器の機能で大きく変わる。表示器の更新を伴うと数十万円規模
② 通信ユニット増設ユニット+作業で数万〜数十万円程度ユニットが入手できることが前提。電気工事を伴う場合あり

金額はあくまで概算で、機種・台数・どこまで自動化するかで大きく変わります。ひとつ確かなのは、試しに始めるだけなら③の数千円コースで十分だということです。まず外付けで数字を貯めてみて、「やはりPLC内部の数値が要る」と分かってから①②④に進んでも遅くありません。

まとめ:仕様確認が第一歩、迷ったら外付け

  • 古いPLCにLANポートがないのは普通。経路は「シリアル・ユニット増設・外付け・表示器」の4つ
  • どの経路も、部品購入の前に銘板の型式確認とマニュアル調査が先
  • PLCに触る作業は電源遮断・有資格者・保証確認が前提。保守部品の枯渇リスクも忘れない
  • ON/OFFレベルの情報で足りるなら、PLCに触らない外付けセンサーが安全で安い

「LANポートがないから無理」とあきらめる必要はありません。ただし、頑張る方向を間違えると高くつきます。まず型式を調べ、無理そうなら外付けに切り替える——この順番さえ守れば、古い設備でもデータ収集は始められます。

シリアルポートしかないPLCでも、クラウドにデータを送れますか?

市販のシリアル−LAN変換器やIoTゲートウェイを経由すれば、送れる場合があります。ただしPLC側の通信プロトコルに機器が対応していることが条件なので、型式を確認してから機器を選定してください。

メーカーのサポートが終了したPLCでも、データ収集はできますか?

できます。外付けセンサーで信号を外側から拾う方法なら、PLCの機種やサポート状況に関係なく使えます。一方、サポート終了機のPLC本体に手を入れる改造は、壊したときの代替が利かないためおすすめしません。

PLCにまったく触らずに稼働率だけ知る方法はありますか?

あります。信号灯の点灯を光センサーで検知する、電源線をクランプ式電流センサーで測るなど、設備を改造しない後付けの方法で稼働・停止のデータは取れます。稼働率の把握が目的なら、まずこちらを検討してください。

この記事を書いた人

川島敏英(株式会社サンクスシステムズ代表)。1988年から30年、日立グループで制御・組み込みを中心にシステム開発をしてきた技術者です。2009年からの4年間は、ルネサス/ルネサスモバイル(日立系の半導体会社)で、携帯電話(ガラケー)の「頭脳」にあたる半導体チップ(SoC)の開発を担当しました。現在は中小企業向けに、センサーからWeb画面まで一気通貫のシステム開発を行っています。

詳しい経歴はプロフィールへ。「うちの設備でもできる?」「いくらかかる?」といった段階のご相談も歓迎です。制作実績はこちら。

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