PLCデータ収集の方法4つ|三菱・オムロン・キーエンスの考え方

「設備のデータを取りたいが、PLCとやらをどう触ればいいのか分からない」「メーカーごとに用語が違って調べるだけで疲れる」——PLCまわりのご相談で、いちばん多い入り口です。

結論から言うと、PLCからデータを収集する方法は「①Ethernet通信 ②シリアル通信 ③増設ユニット ④外付けセンサー」の4つに整理できます。三菱・オムロン・キーエンスといったメーカーの違いは「どの方法が使えるか・呼び名が何か」の違いであって、考え方の骨組みは共通です。

この記事でわかること
  • PLCとは何か(専門用語を使わない説明)
  • PLCからデータを取る4つの方法と選び方
  • 三菱・オムロン・キーエンスそれぞれの一般的な考え方
  • 改造のリスクと安全上の注意、費用の概算レンジ
目次

PLCとは:設備の動きを決めている「頭脳」

PLC(シーケンサとも呼ばれます)は、工場の設備の中に入っている小さな制御用コンピュータです。「センサーがONになったらモーターを回す」「異常があればランプを点ける」といった設備の動きは、ほとんどこのPLCが決めています。

つまりPLCの中には、設備が「今どういう状態か」を示すデータがすでに集まっているのです。運転中か停止中か、何個作ったか、どの異常で止まったか。稼働監視や見える化をやるとき、PLCが魅力的なデータ源になるのはこのためです。

PLCの中の動作手順は「ラダープログラム」という形式で書かれています。データを読み出すだけなら、多くの場合このプログラム自体を書き換える必要はありません。「読むだけ」と「書き換える」ではリスクがまったく違う、というのがこの記事の大事なポイントです。

PLCからデータを取る4つの方法

方法は大きく4つです。上から順に「PLCの中身を直接読める度合い」が高く、下に行くほど「設備に触れない安全さ」が上がります。

方法仕組み向いているケース
① Ethernetポート経由の通信PLCのLANポートにPCやゲートウェイ機器をつなぎ、通信でデータを読み出すLANポート付きの比較的新しいPLC。第一候補
② シリアル通信PLCのシリアルポート(RS-232C/RS-485系)から変換アダプタ経由で読み出すLANポートのない一世代前のPLC
③ 増設ユニットの追加通信ユニットを買い足してPLCに装着し、通信機能を後付けするポートが埋まっている・通信機能がない機種
④ 外付けセンサーPLCには触れず、信号灯や電流をセンサーで外から測るPLCが古すぎる・触れない・情報がない場合の確実な逃げ道

私が最初に確認するのは①です。比較的新しいPLCにはLANポートが付いていることが多く、各社とも外部のPCから値を読み出すための通信仕様を用意しています。既存のラダープログラムを書き換えずに「読み出し専用」で始められる場合が多いのが、この方法の大きな利点です。

②と③は、古い機種で①が使えないときの選択肢です。ただしシリアル通信は設定項目(通信速度など)の突き合わせに手間がかかり、増設ユニットはユニット代と取り付け作業が発生します。そして、どうしてもPLCから取れない・触れないなら④です。設備を改造せずに信号を取り出す方法は別記事で4方式を詳しく解説しています。

三菱・オムロン・キーエンス:メーカー別の考え方

国内の現場で出会うPLCは、三菱電機・オムロン・キーエンスの3社でかなりの割合を占めます。最初にお伝えしたいのは、同じメーカーでも機種・世代によって通信手段も用語も違うということです。「三菱だからこの方法」と一律には言えません。以下は考え方の入り口としてお読みください。

三菱電機(MELSECシリーズ)

国内でもっとも広く使われており、古い工場ほど遭遇率が高いメーカーです。歴史が長いぶんシリーズと世代の幅が広く、同じ三菱でもLANポート内蔵の機種から、シリアルポートしかない機種、増設ユニットが前提の機種まで様々です。

外部からデータを読み出すための通信仕様は「MCプロトコル」という名前で広く知られており、対応機種であればPCやゲートウェイから値を読み出せます。ただし対応の有無・設定方法は機種と世代で異なるため、必ず現物の型番からマニュアルを確認してください。

オムロン(SYSMACシリーズ)

制御機器全般に強く、PLCも古くから現場に入っています。オムロン系では「FINS」と呼ばれる通信方式の名前がよく知られており、対応機種なら外部からのデータ読み出しに使えます。こちらも三菱と同様、世代による違いが大きいメーカーです。新しめの機種と古い機種で通信の作法が変わるため、型番の確認が出発点になります。

キーエンス(KVシリーズ)

3社の中では後発ですが、ここ十数年で導入現場が増えています。PCからコマンドを送って値を読み出す方式(上位リンク通信と呼ばれます)が用意されている機種があり、営業・サポートの対応が手厚いことでも知られています。困ったらメーカーに問い合わせやすいのは、担当者が社内に居ない中小企業にとって実務上の利点です。対応状況はやはり機種によるため、要確認です。

私

3社とも共通するのは「型番が分からないと何も始まらない」ことです。ご相談のとき、私はまず制御盤の銘板とPLC本体の写真をお願いしています。

私なら、最初にPLC本体の型番を写真に撮り、メーカーサイトでマニュアルを探すところから始めます。理由は、通信の可否と方法が型番でほぼ決まるからです。マニュアルに「上位リンク」「Ethernet通信」といった章があれば①や②の道があり、なければ③か④に切り替える。この見極めを最初にやると、遠回りせずに済みます。

改造リスクと安全:やってはいけないこと

PLCは設備の「頭脳」なので、雑に触ると設備そのものを止めてしまいます。データ収集の作業に入る前に、次の点を必ず守ってください。

  • 制御盤内の作業は必ず電源を遮断してから行う(AC200V系の配線はそもそも電気工事士の範囲)
  • 稼働中の設備のラダープログラムを安易に書き換えない(読み出し専用から始める)
  • 配線の分岐・信号線の割り込みを自己判断でやらない(メーカー保証や設備業者の保守契約に影響することがある)
  • 生産中の設備で通信テストをしない(試すのは昼休みや段取り替えの時間帯に)

特に大事なのは「読むだけ」に徹することです。プログラムを書き換えない・配線を切らない範囲であれば、失敗しても設備は元のまま動き続けます。逆に、そこを越える作業は設備メーカーや保守業者との相談事項だと考えてください。判断に迷う場合は、PLCに一切触れない④の外付けセンサー方式が、いちばん安全な出発点です。

費用の目安

PLCデータ収集の費用の目安(1台の場合)
方法費用の目安備考
① Ethernet通信(自作)機器代数千円〜数万円+開発の手間小型マイコンやゲートウェイ機器+通信プログラム
② シリアル通信(自作)変換アダプタ数千円〜+開発の手間設定の突き合わせに時間がかかりがち
③ 増設ユニット追加ユニット代数万円〜十数万円+取付・設定機種ごとの対応ユニット確認が必須
④ 外付けセンサー部品代数千円/台〜PLCに触れない。最も低リスク
外注で収集〜表示まで開発数十万円〜(範囲・台数による)Web画面での見える化・日報自動化まで含む場合

金額はあくまで概算で、PLCの機種・台数・取りたいデータの中身によって大きく変わります。「読み出し専用で、まず1台の稼働状態だけ」なら小さく安く始められます。集めたデータを稼働率の自動集計につなげる全体像は、設備稼働率の測り方の記事で解説しています。

まとめ:型番確認から始めて、読み出し専用で小さく

  • PLCには設備の状態データがすでに集まっている。まずはそれを「読むだけ」でいい
  • 方法はEthernet通信・シリアル通信・増設ユニット・外付けセンサーの4つ
  • 三菱・オムロン・キーエンスとも、通信手段と用語は機種・世代で異なる。型番からマニュアル確認が出発点
  • 電源遮断・有資格者の範囲・メーカー保証に注意し、プログラム書き換えと配線分岐は安易にやらない

PLCのデータ収集は、専門用語の壁で難しく見えますが、やることは「型番を調べ、使える通信手段を選び、読み出し専用でつなぐ」の3つです。手元の設備の型番を調べるところから、ぜひ始めてみてください。

PLCの型番はどこを見れば分かりますか?

制御盤の中のPLC本体(CPUユニット)の前面か側面に型番が印字されています。盤を開ける際は必ず設備を停止し、分からなければ盤の扉の銘板や設備の取扱説明書を先に確認してください。写真を撮っておくと、メーカーや業者への相談がスムーズです。

データを読み出すとPLCの動作に影響しませんか?

読み出し専用の通信は影響が小さい設計になっていますが、ゼロとは断定できません。短い間隔で大量に読み出す設計は避け、まず生産に影響のない時間帯で動作を確認してから常時運用に移すのが安全です。

古すぎてマニュアルが見つからないPLCはどうすればいいですか?

無理にPLCから取ろうとせず、外付けセンサー方式(信号灯を光センサーで見る・電流をクランプセンサーで測る)への切り替えをおすすめします。PLCに一切触れないため、資料のない古い設備でも安全にデータを取れます。

この記事を書いた人

川島敏英(株式会社サンクスシステムズ代表)。1988年から30年、日立グループで制御・組み込みを中心にシステム開発をしてきた技術者です。2009年からの4年間は、ルネサス/ルネサスモバイル(日立系の半導体会社)で、携帯電話(ガラケー)の「頭脳」にあたる半導体チップ(SoC)の開発を担当しました。現在は中小企業向けに、センサーからWeb画面まで一気通貫のシステム開発を行っています。

詳しい経歴はプロフィールへ。「うちの設備でもできる?」「いくらかかる?」といった段階のご相談も歓迎です。制作実績はこちら。

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