チョコ停対策はまず記録から:停止を自動記録する3つの後付け手段

「また止まってる」——1回あたり数分で復旧する短い停止、いわゆる「チョコ停」。対策しようにも、いつ・何回・なぜ止まったのかが分からず、会議が「たぶんあの装置だと思う」で終わってしまう。中小の製造現場で本当によく聞く悩みです。

結論から言うと、チョコ停対策の第一歩は原因究明でも設備更新でもなく、「いつ・どれだけ止まったか」を自動で記録する仕組みを作ることです。設備を改造しない後付けのIoTなら、部品代数千円程度から作れます。

この記事でわかること
  • チョコ停の対策がなかなか進まない本当の理由
  • 停止の自動記録を後付けで作る3つの方法と費用の目安
  • 記録が貯まってからの分析の進め方(3ステップ)
  • 自作・市販サービス・外注それぞれの費用感
目次

チョコ停とは:短い停止ほど「なかったこと」にされる

チョコ停とは、数十秒〜数分程度で復旧する短い設備停止のことです。ワークの詰まり、センサーの誤検知、材料供給の引っかかり、エア圧の低下など、原因は現場ごとにさまざまです。

数時間〜数日止まる大きな故障は「ドカ停」と呼びます。ドカ停は誰もが覚えていて対策も打たれますが、チョコ停は復旧が簡単なぶん、対策されないまま放置されがちです。

やっかいなのは、1回あたりの停止は小さくても、回数が多いことです。3分の停止が1日20回あれば、それだけで1時間。積み上げるとドカ停より合計時間が長い、という現場は珍しくありません。

なぜ対策が進まないのか:原因が記録に残らないから

チョコ停対策の本質的な難しさは、技術ではなく「記録がないこと」にあります。

  • 復旧が簡単なので、作業者がその場で直して作業に戻る。日報には残らない
  • 1日に何十回もあると「いつものこと」になり、記憶にも残らない
  • 月末に「稼働率が低い」ことだけ分かるが、内訳(どの設備で・いつ・なぜ)が分からない

チョコ停の対策会議で一番多いのは、「たぶんあの装置だと思う」で議論が止まるパターンです。数字がないと、対策はどうしても当てずっぽうになります。

だから順番が大事です。いきなり原因を潰しにいくのではなく、まず「止まった事実」が自動で貯まる仕組みを作り、データに原因候補を絞らせる。これがチョコ停対策の定石だと私は考えています。

停止の自動記録を後付けで作る3つの方法

記録の取り方は大きく3つあります。ポイントは、どれも既存の設備を改造せずに「後付け」できることです。

方法何が分かるか部品代の目安向いているケース
① 積層信号灯(パトライト)を光センサーで見る止まった時刻と停止時間数千円/台〜信号灯付きの設備全般。最初の1台に最適
② 電流をクランプセンサーで測る止まった時刻と停止時間(負荷の変化も)数千円〜1万円台/台信号灯がない設備。古い汎用機にも使える
③ 作業者ボタンで停止理由を記録する止まった「理由」の内訳数千円/台〜(ボタン+小型マイコン)①②と併用して原因の内訳を知りたい場合

私なら、まず①の光センサー方式から始めます。理由は、設備の電気系に一切触れないので保証や安全の心配がなく、うまくいかなくても外せば元通りだからです。②のクランプ式も、被覆の上から電源線を挟むだけなので配線を切らずに使えます。

そして見落とされがちなのが③です。センサーが記録できるのは「いつ・どれだけ」までで、「なぜ止まったか」は分かりません。そこで復旧のついでに「詰まり」「材料切れ」「その他」くらいの大まかなボタンを1回押してもらう。これだけで、後の分析の質がまったく変わります。

制御装置(PLC)の信号線から停止信号を直接取る方法もありますが、制御盤内の作業には電源遮断と電気の知識(AC200V系は電気工事士の範囲)が必要で、メーカー保証に影響することもあります。まずは上の非破壊な方法から検討してください。

マイコンは「基板むき出し」。ケースとセットで考える

センサーの信号を拾って記録するには、ESP32のような小型マイコン(数百円〜)を使いますが、買ったままでは基板がむき出しです。油や粉じんの飛ぶ現場では短絡や故障の原因になるので、ケースまでセットで考えてください。ケース一体型の完成品(M5Stackシリーズなど、2,000〜4,000円程度)を選ぶか、タカチのBCAPシリーズや未来工業のウオルボックスといった汎用の防水防塵ボックス(800〜3,000円程度)に入れるのが定番です。価格はいずれも2026年8月時点の目安です。

なお、停止時間の記録がそのまま貯まると、設備稼働率の測定・自動集計にもつながります。センサーからクラウド、Web画面までの全体の仕組みは設備稼働率の測り方と自動集計の始め方で詳しく解説しています。

記録が貯まってからの分析の進め方3ステップ

記録の仕組みができたら、次は分析です。といっても難しい統計は要りません。進め方はシンプルです。

STEP
まず2週間、口出しせずに貯める

対策を焦らず、まず2週間ほどデータを貯めます。この期間に対策を混ぜると「元の状態」が分からなくなり、後で効果を測れなくなります。

STEP
回数と合計時間で並べ、上位3つに絞る

停止を「理由別・時間帯別・設備別」に集計し、回数と合計時間の多い順に並べます。たいていの現場では、少数の原因が停止時間の大半を占めています。

STEP
上位1つだけ対策し、数字で効果を確認する

いちばん合計時間の長い原因を1つだけ対策し、次の2週間の数字と比べます。効果が出ていれば次の原因へ。出ていなければ対策を見直します。

ここでの私の判断基準は、「全部直そうとせず、合計停止時間が最長の1件だけに絞る」ことです。理由は、対策の効果がグラフではっきり見えると、現場が「次はあれを直そう」と自分から乗ってくるからです。一度に手を広げると、どの対策が効いたのか分からなくなります。

「記録を見たら、犯人は疑っていた装置ではなく、朝イチの材料供給だった」ということもよくあります。数字は思い込みを裏切ってくれるのがいいところです。

費用の目安

停止の自動記録にかかる費用の目安(1〜数台の場合)
やり方費用の目安向いている会社
自作(ESP32+光センサー等)部品代5,000円前後/台+社内の手間電子工作やITが好きな社員がいる
市販の稼働監視サービス初期費用+月額数千円〜数万円/台程度手間をかけずすぐ始めたい
外注で自社向けに開発数十万円〜(台数・理由ボタンの有無などによる)理由記録や日報まで自社の運用に合わせたい

金額はあくまで概算で、設備の状況や必要な機能によって大きく変わります。「止まった時刻と時間の記録だけ」なら1台数千円の部品代から始められます。逆に、理由ボタンや日報の自動生成まで含めると規模が上がるので、まず小さく始めて必要になったら足すのがおすすめです。

よくある失敗と注意点

  • 記録を紙やExcelの手入力に頼って続かない(自動で貯まる形を最初に作る)
  • 最初から全設備に付けようとして頓挫する(いちばん困っている1台から)
  • 記録を「誰のせいか」の犯人探しに使い、作業者が理由ボタンを押さなくなる
  • 記録だけ貯めて誰も見ない(週1回、数字を見て話す場を先に決めておく)

特に3つ目は要注意です。理由ボタンの記録は人を責める道具ではなく、設備と段取りのムダを見つける道具です。導入前にこの目的を現場と共有できるかどうかで、記録の質も定着率もまったく変わります。

まとめ:原因探しの前に、記録の仕組みを作る

  • チョコ停対策が進まないのは、原因が記録に残らないから
  • 第一歩は「いつ・どれだけ止まったか」の自動記録。後付けの光センサー・クランプ電流センサーで数千円から作れる
  • 「なぜ」は作業者の理由ボタンで拾うと分析の質が上がる
  • 2週間貯める→上位に絞る→1つ対策して数字で確認、の繰り返しで潰していく

チョコ停は「気合で減らすもの」ではなく、「記録して潰すもの」です。数千円のセンサー1個で、当てずっぽうの対策会議を数字で話す会議に変えられます。まずは1台、記録が自動で貯まる状態を作ってみてください。

チョコ停とはどのくらいの停止を指しますか?

厳密な定義はありませんが、一般に数十秒〜数分程度で作業者がその場で復旧できる短い停止を指します。数時間以上かかる大きな故障(ドカ停)と区別して使われます。

原因の見当がまったく付かない状態でも効果はありますか?

むしろその状態にこそ向いています。自動記録は「どの設備が・いつ・どれだけ止まったか」を明らかにして原因候補を絞り込んでくれるので、見当が付かないまま対策するより確実です。

作業者の負担は増えませんか?

停止の検知と時間の記録はセンサーが自動で行うので、負担はほぼ増えません。理由ボタンを併用する場合も、復旧のついでにボタンを1回押すだけの運用に抑えるのが長続きのコツです。

この記事を書いた人

川島敏英(株式会社サンクスシステムズ代表)。1988年から30年、日立グループで制御・組み込みを中心にシステム開発をしてきた技術者です。2009年からの4年間は、ルネサス/ルネサスモバイル(日立系の半導体会社)で、携帯電話(ガラケー)の「頭脳」にあたる半導体チップ(SoC)の開発を担当しました。現在は中小企業向けに、センサーからWeb画面まで一気通貫のシステム開発を行っています。

詳しい経歴はプロフィールへ。「うちの設備でもできる?」「いくらかかる?」といった段階のご相談も歓迎です。制作実績はこちら

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