設備稼働率の測り方と自動集計の始め方【後付けセンサーで数千円から】

「稼働率を上げろと言われるが、そもそも今の稼働率が分からない」「日報はあるが、集計する時間がない」——中小の製造現場で本当によく聞く悩みです。

結論から言うと、設備稼働率の測定と集計は「信号を拾う→クラウドに送る→自動で集計して表示する」の3段構えで作れます。設備を改造しない後付けセンサーなら、部品代は1台あたり数千円程度から始められます。

この記事でわかること
  • 設備稼働率の計算式と、最初に測るべき数字
  • 設備を改造せずに稼働データを取る4つの方法と費用の目安
  • 自動集計の仕組み(センサー→クラウド→Web画面)
  • 導入の進め方3ステップとよくある失敗
目次

設備稼働率とは:計算式はシンプル

設備稼働率にはいくつかの定義がありますが、最初に測るべきはいちばん基本の「時間稼働率」です。

時間稼働率(%)= 実際に動いていた時間 ÷ 動くべきだった時間 × 100

たとえば1日8時間の操業で、段取り替えや故障・チョコ停で2時間止まっていれば、稼働率は75%です。式は簡単ですが、現場で難しいのは「実際に動いていた時間」を正確に知ることです。人の記憶と手書きの日報では、数分単位の停止は必ず抜け落ちます。

より詳しい指標に「設備総合効率(OEE)」があります。時間稼働率×性能稼働率×良品率で計算しますが、最初からOEEを狙うと挫折しがちです。まずは時間稼働率だけで十分、というのが私の考えです。

なぜ手書き日報の集計では回らないのか

多くの現場では、作業者が日報に稼働時間や停止理由を書き、それを事務所でExcelに転記して集計しています。この方式には構造的な弱点があります。

  • 数分のチョコ停は書き残されず、実際より稼働率が高く見える
  • 転記と集計に毎日30分〜1時間かかり、続かない
  • 集計が月末にまとまるため、対策が1か月遅れる

集計が遅れるほど「なぜ止まったか」は思い出せなくなります。稼働率の測定は、記録の自動化とセットで考えるのが近道です。

設備を改造せずに稼働データを取る4つの方法

稼働データの取り方は大きく4つあります。ポイントは、どれも既存の設備を改造せずに「後付け」できることです。

方法仕組み部品代の目安向いているケース
① 積層信号灯(パトライト)を光センサーで見る信号灯の点灯を光センサーで検知して稼働と判定数千円/台〜信号灯付きの設備全般。最初の1台に最適
② 電流をクランプセンサーで測る電源線を挟むだけで電流を計測し、稼働・負荷を判定数千円〜1万円台/台信号灯がない設備。負荷の変化も見たい場合
③ PLCから信号をもらう制御装置(PLC)の稼働信号を直接取得設備により大きく変動比較的新しい設備。正確さを優先したい場合
④ カメラで見るWebカメラの映像から動作や表示灯を判定数千円〜+判定の仕組み配線に一切触れない・近づけない設備

私がまずおすすめするのは①の光センサー方式です。設備の電気系に一切触れないので、メーカー保証や安全の心配がなく、うまくいかなくても外せば元通りだからです。②の電流方式は、被覆の上から挟むクランプ式なら配線を切らずに使えます。

③のPLCから信号を取る方法は正確ですが、制御盤内の作業には電源遮断と電気の知識(AC200V系は電気工事士の範囲)が必要で、メーカー保証に影響することもあります。安易な配線分岐はおすすめしません。まず①②の非破壊な方法から検討してください。

自動集計のしくみ:センサーからWeb画面までの3層

センサーで信号を拾えたら、次は「集計して見える形にする」部分です。仕組みは3層で考えると整理できます。

自動集計の3層構成
  • 現場層:センサー+小型マイコン(ESP32など数百円〜のもの)が信号を検知
  • 通信・記録層:Wi-Fiやモバイル回線でクラウドのデータベースに送って蓄積
  • 表示層:Webダッシュボードで稼働率をグラフ表示。日報も自動生成

この3層を別々の製品やベンダーで組み合わせると、つなぎ目の調整で苦労しがちです。私は普段、センサー側のマイコンからWeb画面まで一式で設計します。実際、展示会向けの月面探査車デモ機では、500円程度のマイコン(ESP32)で映像伝送と操作コマンドの同時リアルタイム処理まで作りました。稼働監視で必要な「毎秒数回の信号送信」は、この規模のマイコンで十分こなせます。

スマホで見られるWeb画面にしておくと、事務所でも出先でも同じ画面を見られます。専用アプリより、ブラウザで開けるWebダッシュボードのほうが導入も更新も楽です。

ESP32はむき出しの基板。ケースとセットで考える

ひとつ注意点があります。ESP32はマイコンの基板そのもので、買ったままでは基板がむき出しです。油や粉じん、金属の切り粉が飛ぶ現場にそのまま置くと、短絡(ショート)や故障の原因になります。現場設置では必ずケースとセットで考えてください。市販品でそろえる選択肢は3つあります。

選択肢内容価格の目安
ケース一体型の完成品を選ぶM5Stackシリーズなど、ESP32がケースに入った完成品。カメラ付きの「Timer Camera」系は壁固定用の取付部品も付属2,000〜4,000円程度
ESP32-CAM用の市販ケースカメラ付きESP32-CAMの基板がそのまま入る専用ケース。アクリル組み立て式や、壁掛け穴付きの樹脂製がAmazon等で買える500〜2,000円程度
汎用の防水・防塵ボックスに入れるタカチ電機工業のBCAPシリーズ(フタが透明なタイプならカメラを入れてもフタ越しに撮影できる)や、未来工業のウオルボックス・PVKボックスなど電設資材の定番品。モノタロウやホームセンターで入手可800〜3,000円程度

油や粉じんの多い現場なら、私は透明フタの防水ボックス(IP65級)をおすすめします。カメラを使う場合はレンズをフタの内側に密着させると、照明の映り込みを防げます。ケーブルの引き込み口には数百円のケーブルグランドを付けると密閉を保てます。価格はいずれも2026年8月時点の目安です。

導入の進め方3ステップ

STEP
まず1台だけ測ってみる

いちばん「止まると困る」設備を1台選び、2週間ほど測定します。この段階では見た目や精度より「数字が自動で貯まる」ことを優先します。

STEP
判定を現場に合わせて調整する

実データを見ると「段取り替えも停止扱いになっている」といったズレが必ず見つかります。しきい値や判定ルールを現場の実態に合わせて直します。

STEP
台数を増やし、日報を自動化する

1台で運用が回ったら横展開します。稼働率の集計表や日報を自動生成する形まで作れば、手書きの日報と月末の集計作業をやめられます。

費用の目安

稼働監視の費用の目安(1〜数台の場合)
やり方費用の目安向いている会社
自作(ESP32+センサー)部品代5,000円前後/台+社内の手間電子工作やITが好きな社員がいる
市販の稼働監視サービス初期費用+月額数千円〜数万円/台程度手間をかけずすぐ始めたい
外注で自社向けに開発数十万円〜(台数・範囲による)自社の運用・帳票に合わせて作り込みたい

金額はあくまで概算で、設備の状況や必要な機能によって大きく変わります。ご相談を受けるとき、私が最初に伺うのは「何台の、何を知りたいか」です。「稼働率だけをまず知りたい」なら、小さく安く作れます。逆に最初から全部盛りにすると、費用も定着のハードルも跳ね上がります。

よくある失敗と注意点

  • 測ること自体が目的になり、数字を見て終わる(週1回でも「止まった理由」を話す場を作る)
  • 現場に説明せずセンサーを付けて「監視されている」と反発を招く(目的は人でなく設備の見える化だと先に共有する)
  • 工場のWi-Fiが設備まで届かず、データが途切れる(設置前に電波状況を確認する)
  • インバータなどのノイズで誤検知する(配線の取り回しと検証期間で潰す)

特に2つ目は重要です。稼働率の数字は作業者を責める道具ではなく、「設備と段取りのどこにムダがあるか」を見つける道具です。ここを最初に共有できるかどうかで、定着率がまったく変わります。

まとめ:小さく測り始めるのが正解

  • まず測るのは「時間稼働率」だけでいい
  • データ取りは設備を改造しない後付け(光センサー・クランプ電流センサー)から
  • 仕組みは「センサー→クラウド→Web画面」の3層で考える
  • 1台×2週間の小さな測定から始め、判定を現場に合わせてから横展開する

稼働率の測定は、大がかりなシステム投資ではなく「数千円のセンサー1個」から始められる時代になりました。手書き日報の集計に追われている方こそ、まず1台、数字が自動で貯まる体験をしてみてください。

稼働率は何%あれば普通ですか?

業種や設備によって大きく異なるため、一律の「普通」はありません。大事なのは他社比較ではなく、自社の現状値を測って「先月より上がったか」を追うことです。まず現状測定から始めてください。

昭和・平成初期の古い機械でも測れますか?

測れます。光センサーやクランプ式電流センサーによる後付けは、設備側に通信機能がなくても使える方法です。むしろ通信機能のない古い設備にこそ向いています。

設備の保証や安全に影響しませんか?

光センサー方式やクランプ式の電流測定は、設備の配線を切らない非破壊の方法なので、保証や安全への影響を最小限にできます。制御盤内の配線に手を入れる方法は、電源遮断と有資格者による作業が前提です。

この記事を書いた人

川島敏英(株式会社サンクスシステムズ代表)。1988年から30年、日立グループで制御・組み込みを中心にシステム開発をしてきた技術者です。2009年からの4年間は、ルネサス/ルネサスモバイル(日立系の半導体会社)で、携帯電話(ガラケー)の「頭脳」にあたる半導体チップ(SoC)の開発を担当しました。現在は中小企業向けに、センサーからWeb画面まで一気通貫のシステム開発を行っています。

詳しい経歴はプロフィールへ。「うちの設備でもできる?」「いくらかかる?」といった段階のご相談も歓迎です。制作実績はこちら

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